一般廃棄物処理を通した地域への価値創出を進めていくために、どのような取組みがもとめられていくのか、ここでは可燃ごみの処理のCO2削減対策と関係する取組みとして、処理の過程で回収された資源・エネルギーの利用に着目した取組みを6つのモデルで表し、その取組みの考え方や選択肢を示しました。
各モデルの関係は図のとおりで、ごみの特性に応じた資源・エネルギー回収を検討したうえで、回収した資源・エネルギーをどのように利用していくか、特に小規模都市では周辺都市とのごみの融通を行いながらどのような取組みを進めていくかを考えていくことが重要と考えられます。
「ごみの特性に応じた資源・エネルギー回収」モデルについて
特徴
- ごみの特性に応じた回収・中間処理を行うことで、様々な資源・エネルギーとしての利用を可能とするモデル
- 回収した可燃ごみを選別し、バイオマス系廃棄物(紙類、厨芥類)をメタン化処理することでバイオガスを取り出すことが可能となり、全量焼却に比して高いエネルギー回収が可能
- 厨芥類を分別収集してメタン化・堆肥化したり、剪定枝等を含めた分別収集により堆肥化することで、肥料を生成することが可能
- 廃食用油を回収することにより、BDFの生成が可能
対象ごみ
- 可燃ごみ全般(焼却・メタン化処理にあたってし尿汚泥等の受入処理)
処理方式
- 熱回収(焼却)+メタン化(コンバインド方式)
- 燃料化(メタン化)、堆肥化
回収物
- 電気、熱、燃料、BDF
- 肥料(ごみの分別収集等により、夾雑物の混入がないことが前提)
有効利用例
- 電気、熱の地域利用
- 燃料の産業利用、BDFの車両燃料利用
- 肥料の農業利用
関連技術
- ICT技術及び蓄電・蓄熱技術の活用により資源・エネルギーの需給管理高度化の可能性
- 製品プラスチック等の分別回収・材料リサイクル又はケミカルリサイクル高度化の可能性
- 焼却排ガスやバイオガスからのCO2分離回収技術の可能性
- 回収したエネルギー等から水素製造の可能性
先行事例の特徴
- 先行する自治体は、人口4~5万人以上の小都市・地域から大都市まで見られることから、ごく小規模の自治体を除く多くの自治体で取り組み可能性は高いと考えられる
関連マニュアル等
「地域エネルギー事業との連携」モデルについて
特徴
- 中間処理工程で回収したエネルギーを、地域エネルギー事業において活用するモデル
- 連携する地域エネルギー事業としては、新電力等の小売電気事業者、地域熱供給事業者、都市ガス事業者などを想定
- 地域エネルギー事業を通した地域のエネルギー消費の低炭素化を推進するとともに、エネルギー費用の地域外流出を抑え地域経済循環に寄与することも可能
対象ごみ
可燃ごみ全般
処理方式
熱回収(焼却・溶融)
最終処分場の跡地利用として太陽光発電を設置運用することも考えられる
回収物
電気、熱、「ごみの特性に応じた資源・エネルギー回収」モデルと組合せたバイオガス
有効利用例
- 廃棄物発電を、新電力等の小売電気事業者を介して特定の施設等に供給し、環境価値を含めて地域で享受
- 熱を、地域熱供給事業等を通じて地域で利用。エネルギー事業者に供給して低炭素化に貢献
- 「ごみの特性に応じた資源・エネルギー回収」モデルと組み合わせて、バイオガス化後のバイオガスを都市ガス事業者に供給
関連技術
- ICT技術及び蓄電・蓄熱技術の活用により資源・エネルギーの需給管理高度化の可能性(エネルギーマネジメント、VPP等)
- 焼却排ガスやバイオガスからのCO2分離回収技術の可能性
- 回収したエネルギー等から水素製造との連携可能性
先行事例の特徴
- 先行事例は、人口10万人以上の都市又は地域で見られることから、一定のエネルギー回収量を確保可能な施設規模を有する都市又は地域において取組み可能性が高いと考えられる
- 熱やバイオガスの活用にあたっては、処理施設と地域エネルギー事業者と近接していることが効率的実現につながる
関連マニュアル等
「周辺での面的利用/防災拠点化」モデルについて
特徴
- 中間処理工程で回収したエネルギーを、エネルギー回収施設の周辺地域で面的に供給・利用するモデル
- 供給先として公共施設等と自営線で連携することにより、災害時の防災拠点化が可能(エネルギー回収施設側もブラックスタート可能な体制を整備)
- 周辺施設の様々なエネルギー需要に対応しつつ、余剰エネルギーを余さず利用することでエネルギーの地産地消に貢献
対象ごみ
可燃ごみ全般
処理方式
熱回収(焼却・溶融)
回収物
熱・電気
有効利用例
- 平常時、災害時を通した周辺公共施設へのエネルギー供給(電力一括受電で自営線敷設、熱需要に対し熱導管敷設)
- 公共施設等と一体化した地域コミュニティづくりへの貢献
関連技術
- ICT技術及び蓄電・蓄熱技術の活用により資源・エネルギーの需給管理高度化の可能性(エネルギーマネジメント、VPP等)
- 焼却排ガスやバイオガスからのCO2分離回収技術の可能性
- 回収したエネルギー等から水素製造との連携可能性
先行事例の特徴
- 先行事例は、人口10万人以上の都市又は地域で見られることから、一定のエネルギー回収量を確保可能な施設規模を有する都市又は地域において取組み可能性が高いと考えられる
- 自営線や熱導管敷設にあたって、エネルギー供給・利用先となる公共施設等と近接して立地していることが重要
関連マニュアル等
「地域資源・地域産業連携」モデルについて
特徴
- 林地残材等の地域資源の受入や、一定のエネルギー需要を有する地域産業へのエネルギー供給によって、地域の資源・エネルギー循環を推進するモデル
- 受入対象とする地域資源としては、林地残材等の木質系や、汚泥等事業系の廃棄物が想定され、地域の効率的な資源循環に寄与することが可能
- エネルギー利用先として、農林水産業、製造業、素材産業等の第一次・第二次産業が想定され、地域の産業振興に寄与することが可能
対象ごみ
可燃ごみ全般
処理方式
熱回収(焼却・溶融)
*地域資源の性状に応じて「ごみの特性に応じた資源・エネルギー回収」モデルと組み合わせ
回収物
電気、熱、燃料
有効利用例
- 農業ハウス(トマト、キュウリ、バジル、種苗等)への熱供給
- 水産養殖施設への熱供給
- 素材加工工場への熱供給
- 固形燃料製造工場への固形燃料原料の供給
- ボイラ施設への炭化燃料の供給
- 地域の賑わい施設への熱供給
関連技術
- ICT技術及び蓄熱技術の活用により熱需給管理高度化の可能性
- 焼却排ガスやバイオガスからのCO2分離回収・利用の可能性
先行事例の特徴
- 先行事例は、熱供給で10万人~、燃料供給で3万人~の人口規模の都市・地域で見られることから、ごく小規模の自治体を除く多くの自治体で取り組み可能性は高いと考えられる
- 熱供給の場合は、エネルギー回収施設と産業施設とが近接していることが、効率的実現につながる
関連マニュアル等
「小規模地域バイオマス活用」モデルについて
特徴
- 可燃ごみのうち生ごみを分別収集してメタン化処理を行い、回収したバイオガスのエネルギー利用、発酵残渣の肥料利用を行うモデル
- 特に小規模市町村においてし尿・浄化槽汚泥と統合処理を行うことにより、処理コスト低減と資源エネルギー利用の両立が可能
- 発酵残渣の肥料利用により、地域の農業振興に寄与することも可能
- 住民の生ごみ分別協力による環境意識の向上に寄与することも可能
対象ごみ
生ごみ、し尿・浄化槽汚泥
*その他の可燃ごみは他地域と連携処理
処理方式
メタン化処理(主に湿式)
回収物
バイオガス、肥料(液肥)
有効利用例
- バイオガス発電により所内設備動力での電力利用
- 近隣農業での液肥利用(公共側も散布に協力)
- メタン化施設に近接して地域の賑わい施設を整備し地域交流促進
関連技術
- ICT技術及び蓄電・蓄熱技術の活用により資源・エネルギーの需給管理高度化の可能性
- 製品プラスチック等の分別回収・材料リサイクル又はケミカルリサイクル高度化の可能性
先行事例の特徴
- 先行事例は、人口1万人程度の町村・地域から見られることから、小規模市町村において特に取組み可能性が高いと考えられる
- 地域に肥料の受入先となる農業が存在すること、住民の分別収集への協力を得るための様々な啓発活動を行うことが重要
関連マニュアル等
「徹底した分別・リサイクル」モデルについて
特徴
- 住民の協力による多品目分別収集を行い、最大限のリサイクルを図ることで、可燃ごみの焼却処理を抑制するモデル
- リサイクルを最大限に行うことで資源化収入を得るとともに、可燃ごみの焼却処理や最終処分量を抑えることで処理コストの低減を図ることが可能
- 住民の高度な分別協力による環境意識の向上や住民交流に寄与することも可能
対象ごみ
可燃ごみ全般(資源ごみ、不燃ごみ等含む)
*どうしても資源化できないものは他地域と連携処理
処理方式
資源化
回収物
資源物・リサイクル材
有効利用例
- 行政・企業・住民協働型のリサイクル事業を実施することにより、資源ごみを売却することで利益を生み出し、住民に還元
- 生ごみは「小規模バイオマス利活用」モデルと組み合わせて又は各家庭でのコンポスト化により堆肥利用を推進
- ゼロウェイストによる地域のブランド化
関連技術
- ICT技術の活用により資源物分別収集の更なる効率化の可能性
- 製品プラスチック等の分別回収・材料リサイクル又はケミカルリサイクル高度化の可能性
先行事例の特徴
- 先行事例は、人口1万人程度の小規模町村に見られることから、小規模市町村において特に取組み可能性が高いと考えられる