waste resource energy circulation living
ログイン
2021.03.31
清掃工場×チョウザメ?!浜松市のユニークな取り組みとその経緯

静岡県浜松市では、令和6年4月に稼働を開始する新しい清掃工場における付加価値事業として、清掃工場の余熱を利用した養殖事業などを行う予定だ。すでに事業者は決定しており、清掃工場の稼働を待って、付加価値事業の着工を開始する予定となっている。

どのような経緯で、付加価値事業を検討、選定してきたのか、浜松市環境部廃棄物処理課新清掃工場建設担当課長の石原敦資氏にお話しをおうかがいした。

まずは、浜松市のごみ処理施設の体制について教えてください。

石原氏 本市は静岡県の西部に位置し、南は遠州灘、北は赤石連峰を臨み、東は天竜川、西は浜名湖に面し、温暖な気候と豊かな自然環境に恵まれた土地柄です。平成17年7月に市町村合併により、人口が80万人を超え、静岡県第1位となりました。平成19年4月には、全国で16番目となる政令指定都市へ移行し、7つの行政区から構成されています。

本市のごみ処理施設の体制は、合併前の各市町村が所有していた施設を引き継ぎ、その後の施設の統廃合により、現在は2施設(南部、西部清掃工場)で可燃ごみの処理をしております。広域処理として、平成22年10月からは湖西市の可燃ごみを事務委託により本市で受け入れております。

粗大、不燃ごみについては、平和破砕処理センター(西区)で破砕処理をしております。

埋立につきましては、市内4か所の最終処分場で処分をしております。

浜松市では、新清掃工場の整備にあたって、付加価値事業を実施するということですが、新清掃工場の概要について、教えてください。

石原氏 新清掃工場は南部清掃工場(南区)と平和破砕処理センター(西区)の老朽化による、代替施設として、PFI事業のBTO方式により、本市の天竜区内に、造成及び専用道路を含めた清掃工場の整備を進めております。受注者は特別目的会社の株式会社浜松クリーンシステム(以下、「SPC」という。)、代表企業は日鉄エンジニアリング株式会社(受注時は新日鉄住金エンジニアリング株式会社)です。PFI事業は、平成30年2月に契約し、令和6年4月に稼働開始、令和26年3月末までを事業期間としています。

新清掃工場の処理能力は399トン/日、発電能力は1万5,120kWと所内利用の太陽光発電100kWです。また、同一棟内に、処理能力64トン/日の新破砕処理センターも併設します。

本年度は、主に造成工事を進めており、来年度から新清掃工場の建設工事に着手します。

付加価値事業は、事業地内に将来の工場の更新用地があるため、工場建て替えまでの間、その用地を有効利用するものです。

新清掃工場に伴って実施する付加価値事業はどのような事業になるのでしょうか。

石原氏 本付加価値事業の趣旨であります、市域の活性化に資する付加価値の高い事業者を募集した結果、代表構成員として、金子コード株式会社(本社:東京都)、構成員は中村建設株式会社(本社:浜松市中区)が付加価値事業者として決定しました。スキームは、本市が付加価値事業者へ土地を有償で貸付け、使用した温水エネルギー利用料を市へ納めていただきます。

付加価値事業の内容は、新清掃工場から発生する温水エネルギーを利用したチョウザメの陸上養殖、植物工場によるワサビ、熱帯果樹等の栽培、浜松限定ブランドのうなぎいも等の露地栽培などです。溶融スラグも植物の肥料として利用します。地域雇用の創出につきましては、地元からの雇用を3人予定しております。

これらにより、事業排水ゼロ、溶融スラグ利用、エネルギーの有効活用を実現する「浜松型循環モデル」を構築すべく事業を目指すとともに、本付加価値事業の趣旨に合致した付加価値事業となることを期待しております。

金子コード㈱は、すでに、本市天竜区春野町内でチョウザメの養殖を行い、「HAL(ハル) キャビア」のブランドで出荷しております。ハルキャビアは、英国で開かれた、ポロの世界大会「ザ・ロイヤルウィンザーカップ2019」の副賞として採用されました。また、中村建設㈱はPFI事業のSPCの構成員でもあり、積極的にSDGsに取り組んでいる企業であります。

(左)発生スラグ循環利用モデル (右)事業用水の循環利用モデル



付加価値事業は、エネルギーの有効利用という観点から、「浜松市エネルギービジョン」にはどのように位置づけられているのでしょうか。

石原氏 付加価値事業は市のエネルギービジョンには位置づけられておりませんが、令和2年4月に改訂された「第2次浜松市環境基本計画」内の地域循環共生圏の本市の取り組みとして、「新清掃工場では、余熱エネルギー等を有効利用した新産業や雇用の創出など、市域の活性化に資する事業の展開に取り組んでいく」としております。

平成28年に民間企業へ余熱利用に係る事前調査を実施したとのことですが、そこに至る経緯というのはいかがでしょうか。

石原氏 平成27年度から平成28年度にかけ、余熱利用施設の考え方や付加価値について、「余熱利用庁内検討会議」を立ち上げ、庁内の関係課と連携し検討を行いました。

検討会議の中で、民間企業の意向調査が必要との意見があり、民間企業に対し調査及びヒアリングを行いました。

庁内の関係課は、平成27年度は5課(アセットマネジメント推進課、エネルギー政策課、農業水産課、林業振興課、廃棄物処理課)、平成28年度に5課(市民協働地域政策課、産業総務(雇用・労政担当課長)、産業振興課、農業振興課、天竜区振興課)を加えた10課となり、それぞれ専門的なご意見をいただきました。


* このあと、付加価値事業の方針、平成28年度の事前調査から令和元年のサウンディング調査までの流れと課題、新清掃工場整備運営事業との関係、事業実現の原動力、市民・住民の反応、今後のスケジュール、他の自治体への助言へと話はつづく。

……… この続きを見るには ………

この続きは本サイトに会員登録(ログイン)いただくことで、ご覧いただけます。

新規入会のお申し込みは こちら